地震大国と言われる日本。世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち、約2割が日本周辺で起きています。いつ発生するかわからない大地震に備えて、非常食などを備蓄しているご家庭は多いと思いますが、家の中の地震対策は意外と見落とされがちです。
そこで今回は、地震から身を守る家庭内の防災対策として、家具類の転倒・落下・移動を防ぐ方法をご紹介します。
目次
地震の大きな揺れで家具類が転倒・落下・移動すると、以下の3つの危険が生じる可能性があります。
【1】ケガや死につながる
東京消防庁の発表によると、国内で起きた近年の地震による負傷者の30~50%は、家具類の転倒や落下、移動が原因とされています。とくに、洋服ダンスや食器棚など大型家具の下敷きになって負傷・死亡するケースが多数報告されています。また、テレビや置物が落下して頭にぶつかったり、割れたガラスなどの飛散物を踏んでケガをしたりする恐れもあります。
【2】火災などの二次被害につながる
地震の揺れで転倒・落下・移動した家具が、室内に置いてあった電気ストーブやコンロなどのスイッチを押してしまい、付近のカーテンや燃えやすいものに着火して火災が発生するケースもあります。
【3】避難経路がふさがれて逃げ遅れる
通路やドア付近に置いた家具類が転倒・移動して避難経路をふさいだり、ドアが開かなくなったりして室内に閉じ込められ、火災や津波が発生した際に逃げ遅れる可能性があります。
このように「負傷・死亡」「火災」「避難障害」の3つの危険から身を守るためには、家具類の転倒・落下・移動防止対策が必須といえるでしょう。とくに、マンションやビルなどの高層階(おおむね10階以上)では、長周期地振動(※)によって下層階より揺れが大きくなる傾向があり、家具類の転倒・落下・移動が発生しやすいので注意が必要です。
※長周期振動……地震の揺れが遠くにまで伝わり、地震動が終息した後も、建物が数分にわたって大きく揺れる現象。
家具類の転倒による被害を防ぐには、まず、家具の置き場所やレイアウトを工夫することが基本となります。家具が倒れることを想定しながら、あらためて家の中を見回して、今すぐできる対策から実践しましょう。
居住空間になるべく物を置かない
クローゼットや納戸、作り付けの収納家具などを活用し、居住空間にできるだけ物を置かないようにしましょう。とくに、寝室や子ども部屋は、就寝中に家具が倒れて下敷きになる恐れがありますので、転倒しやすい大型家具は置かない方が安全です。また、住宅内で物を置かないスペースを作っておけば、緊急地震速報を受けたとき、すぐにその場所に避難して安全を確保しやすくなります。
避難経路をふさがないレイアウトにする
避難経路となる廊下・出入り口・ドア付近や、割れたガラスが飛散しやすい窓際に、転倒・落下・移動しやすい家具を置かないようにします。また、大きな揺れで棚の引き出しや収納物が飛び出してくる可能性もありますので、家具を置く方向も考慮しましょう。
重い物は低い位置に収納する
重い物ほど棚の下段に収納すれば、家具の重心が低くなって倒れにくくなり、高い位置から重量物が落下する二次被害も防げます。たとえば、辞書・全集などの重い書籍や、大きな陶器・食器などは、棚の下段に収納するのが基本です。また、背の高い家具の上にできるだけ物を置かないことも重要です。
家具類の置き場所やレイアウトの見直しに加えて、転倒防止アイテムなどの器具で家具類をしっかり固定すれば、より効果的です。市販されている転倒防止アイテムはさまざまなタイプがあり、家具の大きさや種類、置き場所によって、適切なものを使い分けるのがポイント。地震の規模によっては一つのアイテムで耐えきれない場合もあるため、とくに大型の家具や家電は、複数のタイプを組み合わせて使うのがおすすめです。
【突っ張り棒(伸縮棒)】
背の高い家具を固定する伸縮タイプの突っ張り棒。ネジや釘などを使わず、家具と天井の隙間に設置できます。
【転倒防止ベルト】
家具と壁をベルトやワイヤーでつなげて固定します。家具と壁にネジ止めした金具をベルトでつなぐビスタイプや、ネジ止めが不要な粘着パットタイプもあります。
【粘着シート・マット】
家具や家電の下に敷いて使用する、粘着性のあるゲル状のシート。家具の底面と床面をピタッと密着させることで、落下や移動を防止します。
【ストッパー】
家具の前面底部に差し込み、後方に傾斜をつけて壁にもたれかかる状態にすることで、家具が転倒するのを防止します。
【L字型金具(連結金具)】
L字型の金具に、家具と壁をネジやボルトで連結・固定して転倒を防止します。L字を上向きに取り付ける方が簡単ですが、下向きに取り付ける方が転倒防止効果が高くなります。
【キャスターストッパー】
家具や家電のキャスターの下に置いて、大きな揺れによる移動を防止します。とくに、キャスターロックが付いていない家具や家電におすすめです。
【ドアストッパー】
地震の大きな揺れで、収納家具の扉が開かないようにロックします。手動でロックするバックルタイプや、揺れを感知して自動的にロックする「耐震ラッチ」などがあります。
では次章から、家の中でもとくに注意したい「食器棚」「テレビ」「冷蔵庫」の転倒・落下・移動防止対策として、さまざまなアイテムを活用した効果的な対策を紹介しましょう。
食器棚は大きいサイズのものが多く、収納した食器などで重量も重くなりがちです。そのため、転倒すると下敷きになる可能性があるだけでなく、収納した食器や扉の窓ガラスが割れてケガをする恐れもあり、非常に危険です。
食器棚の地震対策として押さえておきたいポイントは、以下の4点です。
【1】突っ張り棒などで転倒を防止する
背の高い食器棚の転倒防止には、伸縮タイプの突っ張り棒がおすすめです。天井との間に棒を設置することで、食器棚を固定して倒れにくくします。さらに、食器棚の前面底部にストッパーを差し込んでおけば、より効果的です。
【2】扉が開かないようロックする
地震の規模によっては、転倒しなくても中の食器が飛び出す恐れもあるため、食器棚の扉をドアストッパーや耐震ラッチなどでロックし、地震の揺れで扉が開かないようにします。
【3】扉ガラスの飛散を防止する
食器棚の扉にガラスが施されている場合、食器棚が倒れてガラスが割れると、床に飛散した破片を踏んでケガをする恐れがあります。そうした事態を避けるために、ガラス部分には飛散防止フィルムを貼っておくと安心です。
【4】重い食器は下の段に収納する
サイズの大きい重い食器は、できるだけ下の段に収納しましょう。そうすることで、棚の重心が下がり転倒しにくくなります。万一、食器が飛び出した場合も、高い位置から重量物が落下する危険を減らせます。
テレビは重心が高いため、ちょっとした揺れでも転倒・落下しやすくなります。また、テレビ本体をテレビ台に固定しただけでは、テレビ台ごと転倒する恐れもあるため注意が必要です。
テレビの地震対策としては、壁に固定されたテレビ台にテレビ本体を直接固定し、さらにテレビ本体を壁と連結して固定するのが最も確実な方法です。押さえておきたいポイントは、以下の3点です。
【1】テレビ台を壁に固定する
まず、L字型金具を使ってテレビ台と壁を連結して固定します。また、キャスター付きのテレビ台の場合は、キャスターストッパーをキャスターの下に置いて移動を防止します。
【2】テレビ本体をテレビ台に固定する
テレビ本体の脚部を、ネジなどで直接テレビ台に固定できる商品は、テレビの取扱説明書に従って取り付けてください。テレビ台へのネジ固定に対応していない場合は、粘着パッドタイプの転倒防止ベルトや粘着シートなどを使って、テレビ本体の脚部をテレビ台に固定します。
【3】テレビ本体と壁をつなぐ
さらに、テレビ本体と後ろの壁をつないで固定します。転倒防止ベルトやワイヤーをテレビの背面2ヵ所に取り付け、壁の固定点としっかり連結することで、テレビ本体の転倒・落下を防止します。
家電のなかでも冷蔵庫は高さと重さがあるため、転倒した際の衝撃が非常に大きく、下敷きになると命に関わることもあります。また、大きな揺れや転倒によって扉が開き、中に入っている食料品が散乱すると、割れたガラス瓶などが飛散して危険なうえ、衛生的にも問題が発生しやすくなります。
冷蔵庫の地震対策として押さえておきたいポイントは、以下の2点です。
【1】突っ張り棒や転倒防止ベルトで固定する
冷蔵庫の転倒防止には、伸縮タイプの突っ張り棒や転倒防止ベルトがおすすめです。一つのアイテムだけでも倒れにくくなりますが、突っ張り棒と転倒防止ベルトを併用すれば、天井と壁の両方に固定できるので、さらに効果的です。
【2】扉が開かないようロックする
地震の規模によっては、冷蔵庫の扉が勝手に開いて中身が飛び出してくる可能性もあるため、冷蔵庫の扉をドアストッパーでロックしておくと安心です。冷蔵庫用のドアストッパーは、手動でロックするタイプや、扉を閉めると自動でロック(チャイルドロック)するタイプ、揺れを感知すると自動的にロックする耐震ラッチなど、さまざまなタイプの商品があります。
家具の転倒防止対策をする際には、家具の種類や大きさ、設置場所や性能を確認して、適切な方法・アイテムを選ぶことが大切です。正しく設置しないと転倒を防げないこともありますので、以下のポイント・注意点を押さえておきましょう。
転倒防止アイテムの耐震性・耐圧性を確認する
市販の転倒防止アイテムには、それぞれ耐震性や耐圧性が記載されています。耐震とだけ記載されている商品ではなく、震度6~7対応と明記されているものがおすすめです。また、突っ張り棒やベルトなどで大型の家具や冷蔵庫を支える場合、一般的に耐圧200Kg~が必要とされていますので、必ず確認してから購入しましょう。
壁に固定する場合は下地の桟・柱を探す
L字型金具などのネジは、強度が高い柱や桟がある壁下地に打ち込む必要があります。柱・桟がない場所や石膏ボードに打ち込むと、十分な強度が得られず、転倒防止の効果も大きく下がってしまいます。壁下地の柱・桟の場所がわからない場合や、石膏ボードに金具を取り付ける場合は、内装施工のプロに依頼した方が確実です。
対策アイテムは左右対称に設置する
突っ張り棒や転倒防止ベルト、ストッパーなどを設置する際は、揺れの圧力が均等に分散するよう、家具に対して左右対称になる位置に二つ以上設置します。一つのみの設置や偏った位置に設置すると、圧力の負荷が一ヵ所に集中し、本来の能力が発揮できなくなります。
積み重ねた家具の上下を連結する
積み重ねて使う家具の場合、上下どちらかの家具を固定しても、重ねた部分で転倒する可能性があります。まず、上下の家具の側面や背面を連結させた上で、上の家具を壁や天井に固定するか、上下の家具それぞれを単独で固定するようにしましょう。
今回ご紹介した対策の中には、ご家庭で今すぐできるものもありますが、さまざまなアイテムを活用した転倒防止対策は、設置する際に注意しなければいけないポイントもいくつかあります。大きな家具の移動が難しい方や、自分で設置するのが不安な方は、工務店やホームセンター、便利屋などのプロに相談して設置してもらうと安心でしょう。
いつ・どこで起きるかわからない地震に備えるためには、家具類の転倒・落下・移動を防ぐことも重要な対策のひとつとなります。ぜひこの機会に、家の中の状況をチェックして早めに対策を取り、地震による被害を最小限に抑えましょう。
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